ウンチが終わったらおやつを

飼い主さんはカウンターキッチンの向こうでお茶を入れてくださっていました。私はそれに向き合う状態で座っており、私の後方にチワワのゲージがありました。カウンター越しに世間話をしていると飼い主さんが「あっ!」と叫んで慌ててキッチンから飛び出し、チワワのゲージに向かいました。びっくりして振り返ると、チワワが自分の肛門に口をつけてクルクル回り、お尻から出るうんちを床に落ちる前に食べてしまったのです!

「はい、完食です……」と悔しそうな飼い主さん。毎日競争なのだそうです。しかしこの競争こそが、チワワの「うんち早食い」の行動を引き起こしている可能性があります。私は飼い主さんに、うんちをしても慌てず、「あっ!」などと声を出さず、できるだけ落ち着いて行動するようにお願いしました。

具体的な対処方法としては、うんちをしたらトイレから少し離れた同じ場所で、大好きな食べものを必ず与えることにしました。これは「うんちをしたらそこに行けばおやつがもらえる」と学習させることで、チワワをできるだけ早くうんちから引き離すことが目的です。おやつが欲しくて、チワワが自らうんちから離れるようになれば、飼い主さんがうんちを拾いやすくなります。

うんちを食べてしまう理由として、お腹が空いているからという説もありますが、私はそれはあまり関係ないと思っています。犬の満腹中枢は壊れているという説もありますし、そうなると基本的には「いくら食べてもお腹が空いている」ということになります。うんちを食べてほしくないからといって、ドックフードの量を増やすのは意味がないし、愛犬を太らせてしまうことになりかねないので注意が必要です。

チワワの場合は、飼い主さんの反応から後天的にうんちを食べることを覚えた可能性が高いのですが、自宅に迎えた子犬が最初から食糞をするケースも少なくありません。とくに、ペットショップから迎えた子犬に多いように感じます。

わが家のチワワが産んだ子犬の成長を観察していく過程で、「これが食糞の原因になるのかな」と思い当たる出来事がありました。子犬たちは生後37日目からシートの上に乗って排便することを覚え始め、、42日目からうんちに興味を示し、くわえようとし始めました。私が見ていられるときはうんちを片づけるようにしていましたが、急いでうんちに近づくと、子犬たちもすごい勢いで集まってくるので大変でした。放っておいたら明らかに食べてしまいそうな様子でしたが、わが家には子犬のほかに成犬がいて、うんちに興味を示している子犬がいても必ず別の犬が遊びに誘い、うんちへの興味はすぐに失われるようでした。

ペットショップのショーケースの中でひとりぼっちの子犬は、身近にうんちがあるとそれで遊び始め、そのうち食べてしまうことがあり得ると、容易に想像できました。

私が繁殖したときにお世話になったブリーダーさんからは、子犬の食糞を避けるために、「留守番など目を離すときには広いスペースに子犬を5頭一緒に入れて、おしつこやうんちができるだけ近くにない状態を保つのがよい」との指導を受けました。

4畳半くらいのスペースに子犬たちを放しておくと、排便のときにはなぜか真ん中ではなくちゃんと隅っこに行くようになりました。床はクッションフロアで、隅にはトイレシーツを敷いているのですが、ちゃんとそこへ行って排泄しました。

しかしながら、限られたスペースでのペットショップの環境では、そうはいかないでしょう。生後30日くらいで子犬は親から引き離され、うんちに興味を示し始めるころに、段ボールやガラスのショーケースに入れられることも珍しくないようです。

ペットショップのガラスケースを眺めていると、子犬が排泄をし、それで遊んだり食べたりする様子を見ることがあります。お店が忙しかったりすると、完食するまでスタッフが来ないこともしばしばあります。そんな環境で育ったら、食糞の習慣があっても不思議ではありません。

チワワの飼い主さんには、提案したトレーニングとベースプログラムを実施してもらいました。

トレーニングを始めたころは、チワワはうんちを食べるスピードを弱める気配はなかったそうですが、4~5日過ぎたあたりからおやつを用意する飼い主さんが気になり出し、食べている途中でもうんちから離れるようになったそうです。大きな最初の一歩です。成果を感じた飼い主さんは、「このトレーニングを根気よく続けていきます」と言ってくださいました。

そう言えば……。お宅へ伺ったとき、チワワはとても人なつこい子でしたので、私に近づいてきてペロペロと私の顔をなめてくれましたっけ。ということは…(笑)。