留守番だけができないチワワ

チワワの『コタロー』の飼い主さんは、私が同じチワワの飼い主であること、私の愛犬がコタローに似ていたことで相談を受けました。

当時いただいたメールには、「『オスワリ』や『フセ』はもちろんのこと、呼べばちゃんと来るし、離れての『マテ』もちゃんとできるし、『ロールオーバー(寝そべってコロンと回転する芸)』も、おもちゃだって片づけられます。芸はたくさんできるんです。でも……すごく吠えるし、留守番ができないんです!」とありました。

じつはこのようなケースは多いんです。芸ができることと、しつけができていることはまったく別。そんな芸だって、気が向いたらやってくれる、では意味がありません。「オスワリ」や「フセ」、「マテ」は、犬が座りたくないときに座ってくれてこそ、初めてしつけができていると言えるのです。

たとえばお客さんが来て、うれしくて飛びつきそうになったとき、「オスワリ」の指示で座らせることができたら、飛びつきを防ぐことができます。飛びつきたい気持ちに、飼い主の指示に従おうという犬の気持ちが勝つ必要があるのです。

コタローは、飼い主さんが外出の支度を始めると、気配を感じてストーカーのようについて回り、ひとりで留守番をさせると、ティッシュペーパーを引っ張り出し、ゴミ箱をひっくり返し、ソファやブラインドを噛みちぎり、壁紙やドアを引っかいてボロボロにするそうです。

さらに、カーペットの上にはうんちをして、洗濯物の上にはおしっこをするという徹底ぶり。ある意味、すばらしいエネルギーなのですが……。

そんなにされてしまうのに、なぜチワワをハウスに入れないのか尋ねてみました。以前ハウスに入れて外出してみたところ、何時間も吠えっぱなしだったようで、ひげはよだれでベトベトになり、ハウス内で大量のうんちをしていたそうです。

「こんな調子なので、非常に不安を感じています」とおっしやる飼い主さん。そんな事情ならと、レッスンを引き受けました。飼い主さん宅に伺いドアホンを鳴らすと、吠える声が聞こえてきました。威嚇とも違う、何か自信なさそうな声です。

ドアを開けると、わが家の愛犬たちとそっくりな動きで飛びつき、吠えていました。飼い主さんは「うるさい!やめなさい!」と声をかけますが、やめるはずもなく。「止まらないと思うので、放っておきましょう」とアドバイスしました。今ここで、そのエネルギーを使うのはもったいないです。

吠える様子から噛まれる可能性は低かったので、そのままつかつかと部屋に入り、案内されたソファに座ってしまうと、コタローは吠えるのをやめ、思いっきり腰が引けながらも私のニオイを嗅ぎ始めました。カウンセリングを始めるころにはそれなりに落ち着きました。

ふと窓のブラインドに目をやると、ちょうどコタローの頭の高さに、コタローの頭の大きさの穴があいていました。穴を覗くと、ちょうど飼い主さんが停めた車が見えます。その正確さには、思わず感心してしまったほど。

「これをやめてくれるまで、ブラインドは買い替えられません」と飼い主さん。けっこうお高かったそうです。お気持ち、お察しします。

留守番中のいたずらは、犬が「不安や不満を感じた」というサインです。エネルギーがあり余っている場合もあります。不安や不満を消すために、快感を得られる行動で紛らわすのは人も犬も同じです。犬は排泄したり、穴を掘ったり、かじったり、破壊したり、吠えたりすることで快感を得て、不安や不満を消そうとします。

なので、留守番ができるようにするためには、まず不安や不満を取りのぞいてやること、飼い主と離れることに慣れさせ、あきらめ、がまんすることを教えることが大事になります。

そんな話をしていると「あの……、コタローと一緒に寝ているんですが、ダメですか?」と、飼い主さんが自ら白状しました。

子犬のころにハウストレーニング(サークル、ゲージ、グレートにひとりで長時間入っていられるトレーニング)をしていなかったり、自立心がきちんと育まれる前にやめてしまったりすると、飼い主への依存が強くなりすぎ、留守番が苦手になってしまう場合があります。とくに、親兄弟から早いうちに離されてしまったりして、不安な環境で飼育された経験があったり、生まれつき神経質だったりする場合には顕著に出てしまうことがあるのです。

子犬を迎えるときにそういう性質を見分けるのは、一般の飼い主さんには難しいと思います。ひと目惚れで買った場合には、そんなことを考える余地もないことでしょう。

どうひいき目に見ても、コタローは、自立した立派な男子には見えませんでした。私はそんなところも好きなのですが、問題が出た以上、そんなことは言っていられません。

コタローのためにも、正しい自立を手伝う作業が必要だと考えた私は、留守中にコタローが不安や不満を感じてパニックを起こさないよう、飼い主さんも心地良い距離感を持てるよう、ベースプログラムを実施してもらいました。もちろん、一緒に寝るのは中止です。

そのほかに具体的なアドバイスとして、留守中のチューイの行動範囲を制限してもらうようにお願いしました。ブラインドをかじられるなら、ブラインドにアクセスできないようにすればいいのです。そのためには、チワワの行動範囲を制限する必要があります。しかし、飼い主さんは「でも何か、かわいそうで……」とおっしやる。そんな飼い主さん、けっこう多いです。そこで、2つの選択肢を天秤にかけてみます。

①ブラインドをかじられ続ける(当分買い替えられず穴があいたまま)

②慣れるまでのあいだ、行動範囲を制限する(慣れてくれるまでの辛抱)

さて、どちらがチワワと家庭のためになるでしょうか?そして、トレーニングの結果はどうなったのでしょうか?

その結果はまた次回書きたいと思います。